
実家の登記簿を見たら、名義がまだ亡くなった祖父のままでした。父もすでに亡くなっているのですが、これは一体どういう状態なのでしょうか?

それは「数次相続」と呼ばれる状態で、祖父の相続と父の相続が両方とも未了のまま重なっている状態です。相続人が増えやすく手続きが複雑になりやすいので、順番に整理していきましょう。
実家の登記簿を確認してみたら、名義が何十年も前に亡くなった祖父や曽祖父のままだった、というケースは決して珍しくありません。このように、最初の相続の際に登記をしないまま次の相続が発生し、権利関係が積み重なっていく状態を「数次相続」と呼びます。相続人が世代を追うごとに増え、遺産分割協議がまとまりにくくなるため、放置期間が長いほど手続きの難易度が上がっていく点が特徴です。この記事では、祖父母名義のまま放置された空き家がどのような状態にあるのか、数次相続の基本的な考え方と、令和6年から義務化された相続登記との関係、実際の手続きの進め方について整理していきます。
祖父母名義のまま放置された空き家とは(数次相続の状態)
数次相続とは、ある人が亡くなり相続が発生した後、その遺産分割や相続登記が完了しないうちに、相続人の一人がさらに亡くなり、新たな相続が発生する状態のことです。例えば、祖父が亡くなった際に実家の名義変更をしないまま、その後に父が亡くなった場合、祖父の遺産分割協議には本来父が参加するはずでしたが、父はすでに亡くなっているため、父の相続人(自分や兄弟姉妹など)がその立場を引き継いで協議に参加することになります。相続が2代、3代と重なるほど、関係する相続人の数は増えていき、疎遠な親戚まで含めて話し合いをしなければならない事態に発展しやすくなります。
数次相続になりやすいのは、実家の名義変更を後回しにしたまま何年も過ぎてしまうケースです。名義変更をしなくても日常生活で困ることが少なく、固定資産税の納税通知書も代表者宛てに届き続けるため、そのまま放置されやすいという事情があります。しかし、名義変更をしないうちに相続人の誰かが亡くなると、その時点で新たな相続が発生し、関係者がさらに増えていきます。祖父の代から数えて数十年放置されている実家では、相続人が十数人にのぼることも珍しくありません。

数次相続と代襲相続の違い
数次相続と混同されやすい制度に「代襲相続」があります。代襲相続とは、被相続人が亡くなった時点ですでに相続人となるはずだった人が亡くなっていた場合に、その子どもなどが代わって相続人になる制度です。一方、数次相続は、被相続人が亡くなった時点では相続人が存命であったものの、遺産分割や相続登記が完了する前にその相続人が亡くなってしまうケースを指します。どちらも相続人の範囲が広がりやすい点は共通していますが、いつの時点で亡くなったかによって適用される制度が異なり、遺産分割協議に誰が参加すべきかの考え方にも違いが出てきます。判断に迷う場合は、司法書士に戸籍関係を確認してもらうのが確実です。
実際の相続の現場では、数次相続と代襲相続が同時に発生していることもあります。例えば、祖父の相続開始時にすでに叔父が亡くなっていて代襲相続が生じ、さらにその後、遺産分割が済まないうちに父も亡くなって数次相続が重なる、といったケースです。こうした複雑なケースでは、誰が現在の相続人であるかを正確に把握するだけでも専門的な知識が必要になるため、早い段階で司法書士に相談し、家系図のような形で相続関係を整理してもらうと状況を理解しやすくなります。
相続登記の義務化と数次相続への影響
令和6年4月1日から、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務化されました。この義務は、すでに数次相続の状態になっている不動産にも適用され、施行日より前に相続が発生していた場合であっても、施行日または相続を知った日のいずれか遅い日から3年以内に登記を行う必要があります。正当な理由なく期限内に登記をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。祖父母名義のまま放置してきた空き家についても、この義務化をきっかけに整理を検討する方が増えてきています。
過料の対象になるかどうかは、あくまで「正当な理由なく」期限内に登記をしなかった場合に限られます。相続人が非常に多く戸籍の収集に時間がかかっている、遺産分割協議がまとまらず係争状態にあるといった事情がある場合は、正当な理由として認められる可能性があります。ただし、何もせずに放置しているだけでは正当な理由とは認められにくいため、少なくとも相続人の調査や協議を進めている記録を残しておくことが大切です。


相続登記が義務化されたと聞きましたが、祖父の代からずっと放置してきた実家も対象になるのでしょうか?

はい、施行日より前に発生した相続も対象になります。放置期間が長いほど相続人の数が増えて手続きが大変になりますので、早めに着手することをおすすめします。
数次相続の相続登記手続きの進め方
数次相続の相続登記では、まず被相続人(祖父など)の出生から死亡までの戸籍を集め、法定相続人が誰であったかを確定させることから始まります。そのうえで、その後に亡くなった相続人(父など)についても同様に戸籍を集め、誰がその立場を引き継いだのかを整理していきます。相続人が確定したら、現在存命の相続人全員で遺産分割協議を行い、最終的に誰が不動産を取得するかを決めることになります。相続人の数が多い場合や、一部の相続人と長年連絡を取っていない場合は、戸籍の収集だけでもかなりの時間がかかることがあり、専門家に依頼したほうがスムーズに進むケースがほとんどです。

| 手続きの流れ | 内容 |
|---|---|
| 戸籍の収集 | 最初の被相続人から現在までの戸籍をすべて収集 |
| 相続人の確定 | 数次にわたる相続人関係を整理し現在の相続人を確定 |
| 遺産分割協議 | 現在の相続人全員で不動産の取得者を協議 |
| 相続登記の申請 | 法務局へ登記申請(中間省略できる場合あり) |
中間省略登記が使える場合とは
数次相続の場合、原則としては祖父から父へ、父から自分へと、相続の経過をそのまま登記に反映させる必要がありますが、一定の条件を満たすと、中間の相続人が1人であった場合に限り、祖父から自分へと直接名義を移す「中間省略登記」が認められることがあります。これは、中間の相続が単独相続であった場合、つまり祖父の遺産分割協議の結果、父が単独で不動産を相続することが確定していたと言える場合に限られます。中間に複数の相続人がいた場合や、遺産分割協議が未了のまま次の相続が発生した場合は、原則どおり各段階の相続をすべて登記に反映させる必要があるため、自分のケースが中間省略登記の対象になるかどうかは、司法書士に確認することをおすすめします。
中間省略登記が利用できるかどうかは、過去の遺産分割の経緯を示す資料が残っているかどうかにも左右されます。数十年前の相続であっても、当時作成された遺産分割協議書が残っていれば、それをもとに中間の相続が単独相続であったことを証明できる場合があります。逆に、そうした資料が一切残っていない場合は、法定相続分どおりに相続されたものとして扱われ、中間省略登記が使えないこともあるため、まずは自宅に古い書類が残っていないか確認してみることをおすすめします。

数次相続の空き家を放置するとどうなるか
数次相続の状態をさらに放置すると、相続人の数はねずみ算式に増えていきます。子や孫の世代になると、顔を合わせたこともない親戚同士で遺産分割協議をしなければならない状況になり、連絡先の把握だけでも一苦労になることがあります。また、相続人の中に認知症などで判断能力が低下している人がいる場合や、行方が分からない人がいる場合は、成年後見制度の利用や不在者財産管理人の選任など、追加の手続きが必要になることもあります。空き家自体も、名義が整理されないまま老朽化が進むと、売却したくてもすぐには動けない状態が続き、固定資産税だけが発生し続けるという状況にもなりかねません。

相続人の数が増えるほど、遺産分割協議の合意形成にも時間がかかるようになります。中には、実家に思い入れがなく早く手放したいと考える相続人もいれば、思い出のある実家を簡単には手放したくないと考える相続人もいて、意見がまとまらないまま何年も協議が長引いてしまうこともあります。こうした状況を避けるためにも、相続人の数が少ないうちに、できるだけ早く名義の整理に着手することが望ましいといえます。
また、相続人の中に未成年者がいる場合や、認知症等で意思能力に不安がある方がいる場合は、それぞれ特別代理人の選任や成年後見制度の利用が必要になることがあります。こうした手続きにはさらに時間がかかるため、数次相続の状態が長く続くほど、思わぬところで手続きが止まってしまうリスクが高まります。空き家を将来的に売却したい、活用したいという希望がある場合は、その希望を実現するためにも、名義の整理を先送りにしないことが重要です。

親戚づきあいがほとんどない相続人もいるのですが、それでも協議に参加してもらう必要があるのでしょうか?

法定相続人である以上、原則として全員の関与が必要になります。まずは丁寧に事情を説明する手紙を送るなど、専門家のアドバイスを受けながら進めるとスムーズです。
祖父母名義の空き家に気づいたら今すぐできること
実家の名義が祖父母や曽祖父母のままだと気づいた場合は、まず法務局で登記事項証明書を取得し、現在の名義人を確認するところから始めます。あわせて、被相続人の戸籍を取得し、これまでにどれだけの相続が発生しているのか、相続人が何人いるのかをおおまかに把握しておくと、その後の専門家への相談もスムーズに進みます。相続人の人数が多い、関係が複雑という場合は、早い段階で司法書士や弁護士に相談し、戸籍の収集から遺産分割協議のサポートまで依頼することを検討してみてください。
司法書士に依頼する場合の費用は、相続人の人数や戸籍収集の範囲によって幅がありますが、数次相続で相続関係が複雑な案件ほど、通常の相続登記よりも報酬が高くなる傾向があります。とはいえ、自分で戸籍を収集しようとすると、本籍地が遠方の役所にまたがっている場合など、郵送でのやり取りだけで数か月かかることもあり、時間的な負担を考えると専門家に依頼したほうが結果的に早く解決できることも多いです。複数の司法書士事務所に相談し、費用や対応範囲を比較したうえで依頼先を決めることをおすすめします。

アスリートホームでは、宮城県内の相続に関する空き家について、名義整理後の売却や管理のご相談にも対応しています。名義変更が済んでいない段階でも、今後の方針について一緒に整理させていただくことができますので、お気軽にご相談ください。
よくある質問
- 数次相続の場合、相続税の申告期限はどうなりますか?
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後から亡くなった相続人についても相続税の申告義務が生じる場合があり、申告期限の考え方が通常と異なることがあります。税務面については税理士に確認することをおすすめします。
- 相続人の一人と連絡が取れない場合はどうすればよいですか?
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戸籍の附票などから住所を調査し、手紙で連絡を試みる方法が一般的です。それでも連絡が取れない場合は、不在者財産管理人の選任など家庭裁判所の手続きが必要になることがあります。
- 相続登記の義務化に違反した場合、必ず過料になりますか?
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正当な理由がある場合は過料の対象にならないとされています。相続人が多く手続きに時間がかかっているなどの事情がある場合は、法務局に相談しながら進めるとよいでしょう。
- 自分で手続きを進めるのと専門家に依頼するのとでは何が違いますか?
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戸籍収集や相続人の確定は自分で行うことも可能ですが、相続人が多い数次相続では時間と手間が大きくかかります。司法書士に依頼すれば戸籍収集から登記申請までまとめて任せられ、負担を抑えられます。
