空き家の民泊・多目的活用アイデアと注意点

実家が空き家になっているのですが、売るのはまだ迷っていて、民泊とか何か他の使い道はないかなと思っています。実際どんな活用方法があるんでしょうか?

民泊のほかにも、トランクルームや駐車場、シェアハウスなど、建物の状態や立地に応じていくつかの活用方法があります。それぞれメリットと注意点が異なりますので、順番にご紹介していきますね。

相続した実家が空き家になっているものの、売却するのは名残惜しい、できれば何らかの形で活用したい、と考える方もいらっしゃいます。近年では、空き家を民泊(宿泊施設)として貸し出したり、トランクルームやシェアハウス、駐車場など、さまざまな形で多目的に活用したりする事例が増えています。ここでは、空き家の民泊活用の基本的な仕組みと、民泊以外の活用アイデア、それぞれのメリットと注意点について整理していきます。

空き家活用の選択肢としての「民泊」とは

民泊とは、一般の住宅を宿泊施設として旅行者などに貸し出すサービスの総称です。空き家を民泊として活用する場合、主に「住宅宿泊事業法(民泊新法)」に基づく届出を行う方法と、旅館業法上の「簡易宿所」として都道府県知事等の許可を得る方法の2つのルートがあります。住宅宿泊事業法によるものは、比較的手続きが簡易な一方で年間の営業日数に上限がある届出制度、簡易宿所は営業日数の制限はないものの、建築基準法や消防法の構造設備基準を満たす必要があり、許可を得るまでのハードルが高くなる傾向があります。実家をどのように使いたいか、どの程度手間や費用をかけられるかによって、どちらのルートが向いているかが変わってきます。

このほかに、国家戦略特区に指定された一部の地域でのみ利用できる「特区民泊」という制度もあります。特区民泊は、旅館業法の適用を受けずに、区域内の自治体の認定を受けることで営業できる制度で、最低宿泊日数などの独自要件が設けられています。ただし、対象となるのは特区に指定された自治体に限られるため、宮城県内で活用を検討する場合は、まず自分の物件が所在する自治体がどの制度の対象になるのか、あるいはどの制度も対象外なのかを確認しておく必要があります。

どの制度を利用する場合であっても、近隣住民への事前周知が求められることが一般的です。標識の掲示や、緊急時の連絡先の提示など、法令で定められた対応に加えて、着工前や営業開始前に近隣へ簡単な挨拶をしておくことで、後々の苦情やトラブルを減らせることもあります。特に閑静な住宅街で民泊を始める場合は、宿泊者のマナーに関する説明を徹底し、ゴミ出しや騒音など、生活環境への影響に配慮した運営を心がけることが、長く事業を続けるうえで欠かせません。

2階建て住宅の外観

住宅宿泊事業法(民泊新法)の基本ルール

国土交通省の案内によると、住宅宿泊事業とは、旅館業法上の営業者以外の人が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないものと定義されています。都道府県(または保健所を設置する市など)への届出を行うことで事業を開始でき、簡易宿所のような許可制と比べると手続きの負担は軽めです。ただし、年間提供日数が180日以内に制限されるため、通年での安定した収益を見込みにくいという特徴があります。また、条例によって、住居専用地域などでは営業できる期間がさらに制限されることもあるため、事前に物件がある自治体の条例を確認しておく必要があります。

また、住宅宿泊事業者には、宿泊者名簿の備え付けや、外国人観光客を含む宿泊者への必要事項の説明、周辺地域の生活環境への悪影響防止措置など、さまざまな義務が課されています。届出をすれば終わりというわけではなく、事業を継続する限り、こうした管理業務を継続的に行う必要がある点も理解しておく必要があります。特に空き家を遠方から所有している場合、日常的な対応をすべて自分で行うのは難しいことが多く、多くのケースで住宅宿泊管理業者への委託が現実的な選択肢になります。

住宅宿泊事業(民泊新法)届出制、年間180日以内、比較的始めやすい
簡易宿所(旅館業法)許可制、営業日数の制限なし、構造設備基準への適合が必要
特区民泊国家戦略特区に指定された地域限定の制度

180日しか営業できないなら、あまり収益にならない気がするのですが、実際どうなんでしょうか?

収益の規模は立地や運営方法によって差が大きいところです。通年の安定収入を重視するなら賃貸活用、初期投資を抑えて試してみたいなら民泊、というように、目的に応じて選択肢を比較してみるとよいと思います。

家主居住型・家主不在型の違いと管理業務委託

住宅宿泊事業には、家主がその住宅に居住しながら宿泊者を受け入れる「家主居住型」と、家主がその住宅に居住しない「家主不在型」があります。相続した空き家を活用する場合、所有者自身は別の場所に住んでいることがほとんどのため、多くは家主不在型に該当します。家主不在型の場合、宿泊者の衛生管理や安全確保、周辺トラブルへの対応などを行う「住宅宿泊管理業者」への委託が法律上義務付けられています。管理業者に委託すると、清掃や鍵の受け渡し、緊急時対応などを任せられる一方で、委託費用が発生するため、想定される収益と管理コストを事前にシミュレーションしておくことが大切です。

住宅宿泊管理業者に委託する費用は、管理業者や委託範囲によって幅がありますが、宿泊料収入の一定割合を報酬として支払う仕組みが一般的です。清掃や鍵の受け渡しだけを個別に依頼する「一部委託」に対応している業者もあれば、集客から運営まで一括して任せられる業者もあります。委託範囲が広いほど所有者の手間は減りますが、その分費用も高くなる傾向があるため、複数の管理業者から見積もりを取り、内容を比較したうえで選ぶことをおすすめします。

委託契約を結ぶ際は、清掃の頻度や緊急時の対応時間、キャンセル発生時の扱いなど、契約内容を細かく確認しておくことも重要です。口頭での説明だけでなく、契約書に具体的な業務範囲と費用が明記されているかを確認し、不明な点があれば契約前に質問しておくことで、運営を始めてからの認識のずれを防ぎやすくなります。

近年は、地方の空き家を活用した民泊が、観光庁や自治体の後押しを受けて広がりを見せている地域もあります。宮城県内でも、温泉地や観光地に近いエリアであれば、古民家の趣を活かした宿泊施設として需要を見込める可能性がありますが、住宅街や商業施設から離れた立地では、宿泊需要そのものが乏しく、稼働率が上がりにくいこともあります。始める前に、周辺にどのような観光資源やイベントがあるか、近隣に競合となる宿泊施設がどの程度あるかを調べておくことが、事業として成立させるための重要な準備になります。

畳と障子のある和室

用途地域・自治体条例による制限に注意

民泊を始める際には、建物がある場所の用途地域や、自治体が独自に定める条例も確認しておく必要があります。住居専用地域では、住宅宿泊事業法に基づく民泊自体は可能とされていますが、自治体によっては、学校周辺や住宅密集地などで営業可能な期間をさらに制限する条例を設けていることがあります。また、マンションなど区分所有建物の場合は、管理規約で民泊が禁止されていることも多いため、戸建てであっても近隣に配慮した運営が求められます。地域住民との関係を良好に保つためにも、事前に自治体の窓口へ相談し、対象エリアでの営業条件を確認しておくことをおすすめします。

また、住宅宿泊事業を行う住宅には、非常用照明器具の設置や、避難経路の表示など、消防法上の一定の設備基準を満たすことが求められます。古い空き家をそのまま活用しようとすると、これらの設備が整っていないことも多く、追加の工事が必要になるケースが少なくありません。事前に消防署や建築士に相談し、どの程度の改修が必要になるかを確認したうえで、実際にかかる費用を見積もっておくことが重要です。

用途変更にあたっては、建築基準法上の手続きが必要になる場合もあります。例えば、延べ床面積が一定規模を超える建物を旅館・ホテルなどの用途に変更する場合、確認申請が必要になることがあり、住宅として建てられた建物をそのまま宿泊施設に転用しようとすると、採光や換気、避難経路などの基準を満たせず、想定以上の改修が必要になることもあります。着工前に建築士へ相談し、現状の建物のままでどこまで対応できるかを確認しておくと、後になって想定外の出費が発生する事態を防ぎやすくなります。

民泊以外の活用アイデア

民泊はハードルが高いと感じる場合、他の活用方法も検討してみる価値があります。例えば、庭や駐車スペースがある物件であれば、月極駐車場やトランクルームとして貸し出す方法があり、建物自体に大きく手を入れなくても始めやすいのが特徴です。また、複数の部屋がある一戸建てであれば、シェアハウスとして複数人に部屋単位で貸し出す方法もあります。シェアハウスは民泊のような日数制限がなく、入居者が決まれば安定した賃料収入を見込みやすい一方で、入居者同士のトラブル対応や、共用部分の管理といった運営面での負担が生じます。ほかにも、地域のコミュニティスペースや、高齢者向けのデイサービス施設などへの貸し出しを検討する所有者もおり、建物の状態や立地に応じて選択肢は多岐にわたります。

シェアハウスとして活用する場合は、複数の入居者が共同で生活することを前提に、キッチンや浴室、トイレなどの共用部分を使いやすく整備しておく必要があります。個室には鍵を設置し、プライバシーを確保できるようにすることも、入居者を安定して確保するうえで欠かせないポイントです。管理を外部に委託せず自主管理する場合は、入居者募集や契約手続き、共用部の清掃、トラブル対応まですべて所有者自身が担うことになるため、時間的な余裕がどの程度あるかも、選択にあたって考慮すべき要素になります。

入居者募集の面では、地元の不動産会社やシェアハウス専門の仲介サイトを活用する方法が一般的です。募集を始めてから入居が決まるまで数か月かかることもあるため、家賃収入が得られるまでの期間、固定資産税や光熱費の基本料金などの固定費を自己負担で賄えるかどうかも、事前に資金計画に織り込んでおく必要があります。

片付け後の和室

正直、民泊は少しハードルが高そうです。もう少し手軽に始められる活用方法はありますか?

駐車場やトランクルームであれば、比較的少ない初期投資で始めやすい方法です。建物の状態や立地条件を踏まえて、どの活用方法が合っているか一緒に整理していきましょう。

空き家活用にかかる初期費用とリスク

どの活用方法を選ぶにしても、一定の初期費用とリスクが伴います。民泊やシェアハウスとして貸し出す場合、消防用設備の設置や水回りのリフォーム、家具・家電の準備などに、建物の状態によっては数百万円単位の費用がかかることもあります。駐車場やトランクルームであれば初期費用を抑えやすい一方、収益性は民泊やシェアハウスに比べて低くなる傾向があります。また、いずれの活用方法も、需要が見込めるかどうかは立地に大きく左右されるため、始める前に周辺エリアの人口動態や観光需要、競合施設の有無などを調べておくことが重要です。想定していたほどの収益が得られなかった場合に備えて、撤退の判断基準や、活用をやめて売却に切り替える場合の流れも、事前にある程度考えておくと安心です。

室内の廊下

まとめ:活用と売却、両方の選択肢を比較してみる

空き家の民泊活用や多目的活用は、うまくいけば収益を生み出せる可能性がある一方、初期費用や法令上の手続き、運営の手間といった負担も伴います。活用を決める前に、売却した場合の想定金額とも比較しながら、自分たちにとって無理のない選択肢を検討することが大切です。アスリートホームでは、宮城県内の空き家について、活用と売却の両方の視点からご相談を承っております。実家をどうすればよいか迷っている方は、お気軽にお問い合わせください。

活用にあたっては、固定資産税や都市計画税、火災保険料といった保有コストが継続的にかかる点も忘れずに考慮しておく必要があります。特に民泊やシェアハウスとして事業的に貸し出す場合は、住宅用の火災保険とは異なる契約が必要になることもあるため、保険会社に事前に確認しておくと安心です。活用してもなお赤字が続くようであれば、無理に継続せず、早めに売却へ方針転換することも、資産を有効に活かすための現実的な選択といえます。

活用と売却のどちらを選ぶか迷う場合は、まず不動産会社に現状の建物のまま売却した場合の想定価格を査定してもらい、活用した場合に見込める収益と比較してみることをおすすめします。数字で比較することで、感覚的な判断ではなく、具体的な根拠に基づいて方針を決めやすくなります。

空き家を民泊にするにはどんな手続きが必要ですか?

住宅宿泊事業法に基づく届出を都道府県等に提出する方法と、旅館業法上の許可を得る方法があります。届出の場合は年間提供日数が180日以内に制限されるなど、それぞれ特徴が異なります。

家主が住んでいなくても民泊はできますか?

可能ですが、家主不在型に該当するため、住宅宿泊管理業者への委託が法律上義務付けられています。管理業者への委託費用も含めて収益を試算することをおすすめします。

民泊以外に手軽に始められる活用方法はありますか?

庭や駐車スペースがある場合は、月極駐車場やトランクルームとして貸し出す方法があります。建物に大きく手を入れずに始めやすい反面、収益性は民泊やシェアハウスに比べて低くなる傾向があります。

活用してもうまくいかなかった場合はどうすればいいですか?

想定していた収益が得られない場合は、早めに活用を見直し、売却に切り替えることも選択肢の一つです。始める前に、撤退や方針転換の判断基準をある程度決めておくと、状況が変わったときに対応しやすくなります。