
実家を兄と2人で相続したのですが、話し合いがまとまらず、そのまま共有名義になっています。特に困っていないので、このままでもいいのでしょうか?

今すぐ困っていなくても、共有名義のまま放置すると、将来的に売却や活用がしにくくなることがあります。まずは共有名義がどのような状態なのか、リスクとあわせて確認していきましょう。
実家を相続したものの、遺産分割協議がまとまらないまま兄弟姉妹で共有名義にしている、というケースは珍しくありません。共有名義のまま空き家を放置していると、いざ売却したい、活用したいと思ったときに、共有者全員の同意が必要になり、思うように話が進まないことがあります。ここでは、空き家が共有名義になる理由と、そのまま放置するリスク、共有状態を解消するための具体的な方法について整理していきます。
共有名義の空き家とはどんな状態か
共有名義とは、一つの不動産を複数の人が持分を持ち合って所有している状態を指します。遺産分割協議がまとまらないまま相続登記の期限を迎えると、民法の規定により、いったん法定相続分に応じた共有状態として登記されることがあります。例えば、親が亡くなり、子ども2人が相続人であれば、特に話し合いをしなくても、実家は2人の共有名義(持分2分の1ずつ)という扱いになるのが原則です。共有名義であっても、日常的な使用や維持管理(保存行為)は各共有者が単独で行えますが、売却やリフォームなど「変更」にあたる行為には、共有者全員の同意が必要になるという特徴があります。
共有持分の割合は、遺産分割協議で合意すれば自由に決めることができますが、協議がまとまらない場合は法定相続分がそのまま持分割合になります。例えば、配偶者と子ども2人が相続人であれば、配偶者が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1ずつといった形です。持分割合はあくまで「権利の割合」であり、建物を物理的に区切って誰がどの部屋を使うかを決めるものではないため、実際に住んでいない共有者にとっては「自分の権利がどこにあるのか実感しにくい」という声もよく聞かれます。
持分の割合が細かく分かれている場合、例えば8分の1や16分の1といった小さな持分しか持たない共有者も出てきます。持分が小さいからといって発言権が弱くなるわけではなく、変更行為には持分の大小にかかわらず全員の同意が必要になるため、少数持分の共有者であっても、話し合いの場には必ず加わってもらう必要がある点に注意してください。

共有名義のまま放置するとどんなリスクがあるか
共有名義の空き家を放置しておくと、いくつかのリスクが積み重なっていきます。まず、共有者の一人が亡くなると、その持分がさらにその人の相続人に引き継がれ、共有者の人数が増えていきます。世代が進むほど、共有者同士の関係が疎遠になり、意思疎通そのものが難しくなることもあります。また、固定資産税の納税通知書は共有者の代表者一人に送られるのが一般的で、代表者以外の共有者が税金の負担割合について認識にずれが生じ、トラブルに発展することもあります。さらに、共有者全員の同意が必要な売却やリフォームは、一人でも反対したり、連絡が取れなかったりすると実行できず、空き家が老朽化するまま何年も放置されてしまうケースも少なくありません。
固定資産税以外にも、火災保険料や修繕費、庭木の手入れ費用などの負担割合をめぐって共有者間の意見が食い違うことがあります。実際に管理を担っている共有者が費用を立て替えている場合、後から他の共有者に持分割合に応じた精算を求めることができますが、時間が経つほど請求しづらくなる傾向があるため、費用が発生するたびに簡単な記録を残し、定期的に精算しておくことをおすすめします。
さらに、共有名義の不動産は、共有者の一人が認知症などで判断能力が低下した場合、その人の同意を得ることが事実上できなくなり、売却や活用がさらに難しくなるという問題もあります。この場合、成年後見制度を利用して後見人を選任してもらう必要が生じることもありますが、手続きには時間がかかり、後見人がついた後も家庭裁判所の許可が必要になるなど、通常の売却よりも制約が増えることになります。共有者の高齢化が進む前に、方向性を決めておくことの重要性がここにも表れています。
成年後見制度を利用する場合、後見人には親族が選ばれることもあれば、家庭裁判所の判断で弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります。専門職が後見人に選ばれた場合は、後見人への報酬が継続的に発生することもあるため、共有者本人の判断能力があるうちに、将来の方針についてある程度話し合っておくことが、家族全体の負担を軽くすることにつながります。



兄とは今は仲が良くても、将来子どもたちの代になったときに、揉め事が起きないか心配です。

おっしゃる通り、世代が進むほど共有者が増え、話し合いが難しくなる傾向があります。今のうちに共有状態を解消しておくことで、将来のトラブルを未然に防げますので、次に具体的な方法をご紹介します。
共有名義を解消する主な方法
共有名義を解消する方法はいくつかあります。まず、共有者同士の話し合いで解決できる場合、一人が他の共有者から持分を買い取って単独名義にする方法や、全員の同意のもとで第三者に売却し、代金を持分割合で分ける方法があります。話し合いがまとまらない場合は、自分の持分だけを他の共有者以外の第三者(不動産会社など)に売却するという方法も法律上は可能です。ただし、見知らぬ第三者と共有名義になった相手方の共有者にとっては望ましくない事態になりやすく、後々のトラブルにつながりやすいため、慎重な判断が必要です。話し合いでの解決が難しい場合は、次に説明する「共有物分割請求」という法的な手続きを利用することになります。
共有者同士の話し合いによる解決を目指す場合、まずは全員が集まれる機会を作り、それぞれの希望(売却したい、住み続けたい、賃貸に出したいなど)を率直に共有することが第一歩です。感情的な行き違いを避けるため、話し合いの内容を簡単なメモや議事録として残しておくと、後日「言った言わない」のトラブルを防ぎやすくなります。話し合いが平行線になりそうな場合は、早い段階で弁護士や不動産会社などの第三者に間に入ってもらうことで、感情的な対立を避けながら現実的な落としどころを探れることもあります。
共有物分割請求の3つの方法
共有者間で協議が調わない場合、民法258条に基づき、裁判所に共有物分割を請求することができます。裁判所が命じる分割方法には、主に3つの種類があります。1つ目は「現物分割」で、土地を物理的に分筆するなどして、それぞれの単独所有にする方法です。建物がある場合は現実的に難しいこともあります。2つ目は「代償分割(全面的価格賠償)」で、共有者の一人がその不動産を単独で取得する代わりに、他の共有者に持分に応じた金銭を支払う方法です。3つ目は「換価分割(競売による分割)」で、裁判所の手続きにより不動産を競売にかけ、その売却代金を持分割合に応じて分配する方法です。競売になると市場価格より低い金額でしか売却できないことが多いため、可能であれば話し合いや任意売却で解決する方が、共有者全員にとって有利になりやすいといえます。
令和5年の民法改正では、共有物の管理に関するルールも見直されており、共有者の一部が所在不明であったり、管理方法について賛否を明らかにしなかったりする場合に、裁判所の関与のもとで残りの共有者だけで管理に関する決定を進められる制度も整備されています。これにより、これまで「全員の同意が得られず身動きが取れない」となっていたケースでも、一定の要件を満たせば、共有物の管理や変更について前に進めやすくなりました。ただし、制度の適用には裁判所の手続きが必要になるため、具体的な進め方は専門家に相談しながら検討することをおすすめします。
共有物の管理に関するルールの見直しは令和5年4月に施行されたばかりで、今後も運用状況を踏まえて解釈が積み重ねられていく分野です。同じような状況でも、共有者の人数や関係性、不動産の種類によって最適な進め方は変わってくるため、インターネット上の一般的な情報だけで判断せず、実際の状況に即して専門家からアドバイスを受けることが、遠回りに見えて一番の近道になることがあります。
| 現物分割 | 土地を分筆するなどして物理的に分ける方法 |
| 代償分割(価格賠償) | 一人が取得し、他の共有者へ持分相当額を金銭で支払う方法 |
| 換価分割(競売) | 裁判所の手続きで競売し、代金を持分割合で分ける方法 |

共有者の一人が行方不明・非協力的な場合の対応
共有者の中に、長年連絡が取れない人や、話し合いに応じてくれない人がいる場合、通常の協議は難航します。こうした所有者不明・所在不明の共有者がいるケースに対応するため、近年の民法改正では、裁判所の関与のもとで、所在等が不明な共有者の持分を他の共有者が取得したり、第三者に譲渡したりできる制度が整備されました。この制度を利用すれば、行方不明の共有者を探し出せなくても、一定の手続きを経て共有状態を解消できる可能性があります。ただし、手続きには裁判所への申立てや公告などが必要で、時間や費用もかかるため、まずは弁護士や司法書士に相談し、自分のケースで利用できるかどうかを確認することをおすすめします。
行方不明の共有者を探す方法としては、まず戸籍の附票を取得して住民票上の住所を調べる方法が一般的です。それでも連絡が取れない場合や、住所地に実際には住んでいない場合には、上記の裁判所を介した制度の利用を検討することになります。手続きにあたっては、対象となる共有者の持分の時価相当額を裁判所が定める額として供託する必要があるなど、一定の資金的な準備が必要になる点にも留意しておく必要があります。

実は共有者の一人と長年連絡が取れていません。この場合、売却はあきらめるしかないのでしょうか?

あきらめる必要はありません。所在が分からない共有者がいる場合の対応制度もありますので、弁護士や司法書士に相談しながら手続きを進めることができます。あわせて、売却をご検討でしたら私たちにもご相談いただけます。
共有名義のまま売却する方法
共有者全員が売却に同意できるのであれば、共有名義のまま不動産会社に仲介を依頼し、通常の売却活動を進めることができます。売買契約書には共有者全員が署名・捺印する必要があり、代金は持分割合に応じて分配されます。共有者の一人が遠方に住んでいて手続きに立ち会えない場合は、他の共有者や司法書士に手続きを委任する「委任状」を活用することで、直接顔を合わせなくても契約を進められることもあります。共有者間で意見がまとまっているのであれば、共有物分割請求のような法的手続きに進むより、通常の売却活動の方がスムーズかつ市場価格に近い金額での売却が期待できます。
また、共有者の中に未成年者がいる場合は、親権者が法定代理人として契約行為を行うことになりますが、親権者自身も共有者の一人であるようなケースでは、利益相反にあたるとして家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要が生じることもあります。共有者の状況は家族構成によってさまざまであるため、契約の段取りについては早めに司法書士や弁護士に確認しておくと、当日になって手続きが進められないといった事態を避けられます。


早めに話し合うためのポイント
共有名義のトラブルを避けるためには、相続が発生した早い段階で、共有者全員が今後の方針について話し合っておくことが何より重要です。売却するのか、誰か一人が住むのか、賃貸に出すのか、といった大まかな方向性だけでも共有しておくと、後々の手続きがスムーズになります。話し合いの際は、感情的な対立を避けるため、不動産会社による査定額など、客観的な情報をもとに検討を進めるのも一つの方法です。また、令和6年4月からは相続登記の申請が義務化されており、正当な理由なく登記を怠ると過料の対象になることもあるため、共有名義のまま放置せず、名義変更の手続きも並行して進めておくことをおすすめします。
共有名義のまま長期間が経過すると、当初の共有者本人が亡くなり、その子や孫の世代にまで持分が引き継がれ、共有者の数がさらに増えていくことがあります。こうなると、全員の連絡先を把握することすら難しくなり、話し合いによる解決はほぼ不可能に近づいてしまいます。共有名義を放置するリスクは、時間が経てば経つほど大きくなる性質のものだと理解し、なるべく早い段階、できれば相続が発生した直後の落ち着いたタイミングで、今後の方針を決めておくことが望ましいといえます。

まとめ:共有名義は早めの解消が将来の安心につながる
共有名義の空き家は、今は問題がなくても、世代が進むにつれて共有者が増え、解決が難しくなっていく傾向があります。話し合いでの解決が難しい場合は、共有物分割請求などの法的な手続きも選択肢になりますが、まずは共有者全員が納得できる形での売却や持分整理を目指すのが望ましいといえます。アスリートホームでは、宮城県内の共有名義の不動産について、売却のご相談や今後の進め方についてのアドバイスを行っております。共有名義の実家をどうすればよいか迷っている方は、お気軽にお問い合わせください。
- 共有名義の空き家は一人の判断で売却できますか?
-
不動産全体の売却には、原則として共有者全員の同意が必要です。自分の持分だけを第三者に売却することは法律上可能ですが、トラブルにつながりやすいため慎重な判断が求められます。
- 共有者の一人と連絡が取れない場合はどうすればいいですか?
-
所在等が不明な共有者の持分を取得・譲渡できる制度が整備されています。手続きには裁判所への申立てが必要になるため、弁護士や司法書士に相談しながら進めることをおすすめします。
- 共有物分割請求をすると必ず競売になりますか?
-
必ずしも競売になるわけではありません。裁判所は現物分割や代償分割(価格賠償)も選択肢として検討し、状況に応じて適切な方法を判断します。競売は他の方法が難しい場合の手段の一つです。
- 共有名義のままでも固定資産税は誰が払うのですか?
-
納税通知書は共有者の代表者一人に送られるのが一般的ですが、法律上は共有者全員が持分に応じて納税義務を負います。負担割合について事前に共有者間で取り決めておくとトラブルを防ぎやすくなります。
