相続人がいない空き家はどうなる?清算から国庫帰属まで

隣の家がずっと空き家のままで、持ち主の相続人がいないという話を聞きました。この先どうなっていくんでしょうか?

相続人が誰もいない場合、家庭裁判所が選んだ専門家が財産を整理していく手続きに進むことになります。少し複雑な仕組みですので、順番に確認していきましょう。

相続が発生したものの相続人が誰もいない、あるいは相続人全員が相続放棄をしてしまった場合、その空き家は「相続人不存在」という特殊な状態に置かれます。通常の相続とは異なり、家庭裁判所が選任する相続財産清算人という専門家が財産を整理し、特別縁故者への分与を経て、最終的には国庫に帰属するという流れをたどることになります。この記事では、相続人がいない空き家がどのような手続きを経て処理されていくのか、費用や期間の目安、放置した場合のリスクについて整理していきます。近隣に相続人不存在と思われる空き家がある方や、自身の相続放棄を検討している方にも参考にしていただける内容です。

相続人がいない空き家とは(相続人不存在の状態)

相続人不存在とは、被相続人(亡くなった方)に法律上の相続人が誰もいない、または相続人全員が相続放棄をしたことで、結果として相続する人がいなくなった状態を指します。この場合、被相続人の財産は当然には国のものになるわけではなく、いったん「相続財産法人」という扱いになります。そのうえで、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立て、その清算人が財産の調査や債権者への清算、相続人の捜索などを行っていくことになります。空き家がこの状態になると、所有者が実質的に不在のまま長期間放置されやすく、近隣にとっても不安の種になりやすい点が特徴です。

庭のある古民家の外観

相続人不存在になる主なケース

相続人不存在になる背景にはいくつかのパターンがあります。まず、被相続人に配偶者も子もおらず、両親もすでに亡くなっており、兄弟姉妹もいない、あるいは兄弟姉妹がすでに全員亡くなっているケースです。近年は生涯未婚の方や、兄弟姉妹が少ない家庭も増えているため、こうしたケースは珍しいものではなくなってきています。もう一つのパターンは、法律上の相続人はいるものの、負債が多いなどの理由で相続人全員が相続放棄をした結果、相続する人がいなくなるケースです。実家が老朽化した空き家で、解体費用や管理の負担を考えて相続人全員が放棄を選ぶという流れも実際に起こり得ます。どちらのケースでも、財産を誰が引き継ぐかが宙に浮いた状態になるため、家庭裁判所を通じた手続きが必要になります。

近年は生涯未婚率の上昇や、兄弟姉妹の数が少ない家庭が増えていることもあり、こうした相続人不存在のケースは今後も一定数発生していくと見込まれています。特に地方の実家では、子世代がすでに都市部で家庭を築いており、実家に戻る予定がないまま親が亡くなり、さらにその後を継ぐ相続人もいない、という状況が起こりやすい傾向があります。空き家を所有している方は、自分が亡くなった後に相続人がいるかどうかを一度整理しておくと、将来的なトラブルを避けやすくなります。

相続放棄と相続財産清算人の違い

相続人全員が相続放棄をしたからといって、自動的に相続財産清算人が選任されて手続きが進むわけではない点には注意が必要です。相続放棄はあくまで「自分は相続人にならない」という個人の意思表示であり、その後の財産の整理を誰が行うかとは別の問題です。相続財産清算人を選任するには、債権者や特別縁故者になり得る人などの利害関係人、または検察官、あるいは管理不全の状態であれば市区町村が、家庭裁判所に申立てを行う必要があります。誰も申立てを行わなければ、法律上は相続人不存在の状態のまま、実務上は何も進まないという状態が続くこともあり得ます。相続放棄をした人であっても、放棄の時点でその空き家を現に占有していた場合は、次の管理者に引き継ぐまでの間、一定の保存義務が残る点もあわせて理解しておく必要があります。

相続財産清算人とは?選任の申立てと役割

相続財産清算人とは、相続人のいない被相続人の財産を管理し、債権者や受遺者への清算、相続人の捜索、最終的な財産の分配までを行う専門家のことです。弁護士や司法書士が家庭裁判所から選任されるのが一般的です。申立てができるのは、利害関係人(被相続人にお金を貸していた債権者や、特別縁故者になり得る人など)や検察官で、令和5年4月の空家等対策特別措置法の改正により、空き家が管理不全の状態にある場合は市区町村もこの申立てを行えるようになりました。申立ての際には、清算人の活動費用にあてるための予納金を裁判所に納める必要があり、財産の内容によって金額は変わりますが、数十万円程度が必要になることが一般的とされています。申立てをすれば必ず選任されるわけではなく、財産の状況などを踏まえて家庭裁判所が判断します。

予納金は、清算人が官報公告の手続きや財産の調査、必要に応じた不動産の管理・売却などを行うための実費や報酬にあてられます。空き家以外にめぼしい財産がなく、老朽化が進んでいて売却も難しいと見込まれる場合は、予納金の額が高めに設定されることもあります。予納金は財産の換価が進めば清算の中から償還されることもありますが、財産が予納金を下回る場合は返還されない可能性もあるため、申立てを検討する際は、あらかじめ弁護士に財産状況を伝えたうえで、おおよその見通しを確認しておくことをおすすめします。

荷物を運ぶ作業員

特別縁故者とは?財産分与を受けられる場合

特別縁故者とは、被相続人と法律上の親族関係はないものの、生前に生計を共にしていた内縁の配偶者や、献身的に療養看護に努めた人、その他被相続人と特別の縁故があったと認められる人のことです。具体的には、長年連れ添った内縁の配偶者、事実上の養子として育てられた人、献身的に介護や看病を続けていた親族以外の人などが該当し得ます。相続人捜索の公告期間が満了しても相続人が現れなかった場合、特別縁故者は家庭裁判所に対して財産分与の申立てを行うことができます。申立てが認められれば、財産の全部または一部の分与を受けられる可能性がありますが、認められるかどうか、どの程度の分与を受けられるかは、被相続人との関係性の深さなど個別の事情によって家庭裁判所が判断するため、必ず分与を受けられるとは限りません。財産分与の申立てができる期間は、相続人捜索の公告期間が満了してから3か月以内と定められており、この期間を過ぎると申立てができなくなります。特別縁故者になり得ると考えている場合は、公告の状況をこまめに確認し、期限を過ぎてしまわないよう注意する必要があります。生前から被相続人の介護や身の回りの世話を担っていた記録(日記や写真、やり取りの履歴など)を残しておくと、いざ申立てを行う際に特別の縁故を裏付ける資料として役立つことがあります。

内縁の妻として長年一緒に暮らしていたのですが、私が財産を受け取れる可能性はあるのでしょうか?

特別な縁故があったと認められれば、特別縁故者として財産の分与を受けられる可能性があります。ただし、家庭裁判所への申立てなど、いくつかの手続きが必要になりますので、早めに専門家へ相談されることをおすすめします。

最終的にどうなる?国庫帰属までの流れ

相続人捜索の公告期間が満了し、特別縁故者からの申立てもない、あるいは申立てが認められず財産が残った場合、その残余財産は最終的に国庫に帰属します。ただし、被相続人が他の共有者と不動産を共有していた場合は、国庫に帰属するのではなく、その持分は他の共有者に帰属する扱いになる点には注意が必要です。空き家単独の所有であった場合は、清算手続きがすべて終わった時点で国が引き継ぐことになりますが、そこに至るまでには相続財産清算人による調査や公告、換価などの手続きを経る必要があり、決して短期間で完結するものではありません。

なお、相続人不存在の際に財産が国庫に帰属する根拠は民法959条によるもので、生前の所有者自身が申請して手放す「相続土地国庫帰属制度」とは異なる制度です。後者は相続人が土地の管理負担から解放されるために自ら申請する仕組みであるのに対し、前者は相続人がいない場合に清算手続きの結果として財産が国に帰属する仕組みという違いがあります。建物付きの空き家の場合、老朽化の程度によっては国が引き継いだ後に解体や処分の対象となることもあり、必ずしも建物がそのまま維持されるとは限りません。

手続き期間の目安
相続財産清算人の選任申立てから1〜2か月程度
清算人選任・相続人捜索の公告6か月以上(令和5年4月改正で一本化)
相続債権者・受遺者への請求申出の公告上記期間内に2か月以上
特別縁故者の財産分与申立て捜索期間満了後3か月以内
残余財産の国庫帰属上記手続き終了後

相続人不存在の空き家を放置するリスク

相続財産清算人の選任には利害関係人からの申立てが必要になるため、誰も申立てを行わなければ、空き家は法律上宙に浮いた状態のまま放置され続けてしまいます。所有者が実質的に不在のため、屋根の破損や庭木の繁茂、外壁の剥落といった管理不全が進んでも、誰かが積極的に対応してくれるわけではありません。倒壊や部材の落下などで近隣に損害が生じた場合、法律上の責任の所在があいまいになりやすく、被害を受けた側が泣き寝入りせざるを得ない事態にもつながりかねません。近隣にこうした空き家があり不安を感じている場合は、まずは自治体の空き家対策担当窓口に相談し、管理不全の状況を伝えておくことも一つの方法です。

相続人不存在の空き家であっても、著しく管理が行き届かず倒壊の危険がある場合や、衛生上・景観上の問題が大きい場合は、自治体から空家等対策特別措置法に基づく「管理不全空き家」や「特定空き家」に指定されることがあります。指定されると、所有者に対して助言・指導、勧告、命令といった行政措置が段階的に行われますが、相続人不存在の場合はこの措置を受け取る所有者自体が存在しないため、市区町村が主体となって相続財産清算人の選任を申し立てるなど、行政側からのアプローチが必要になるケースが増えています。近隣住民としては、まずは外観の異変に気づいた段階で、早めに自治体へ情報提供しておくことが、対応の速さにつながります。

また、被相続人にわずかでも借金や未払いの税金があった場合、相続財産清算人はこれらの債権者への支払いを財産の中から行う必要があります。空き家を売却して得た代金がこうした清算にあてられることもあるため、相続人がいないからといって財産がそのまま宙に浮き続けるわけではなく、法律に沿って段階的に整理されていく仕組みになっています。

自分が住んでいるわけでもないのに、この先ずっとこの空き家を放っておくしかないのでしょうか?

ご自身が利害関係人にあたる場合は、相続財産清算人の選任を申し立てることも可能です。まずは市区町村の窓口や弁護士に、今の状況を相談してみることをおすすめします。

相続人がいない空き家について今からできること

自分自身が将来相続人不存在になりそうだと感じている場合は、生前に遺言書を作成し、お世話になった人や団体に財産を遺す意思を明確にしておくことで、相続財産清算人の手続きを経ずに済むケースもあります。また、すでに相続放棄を検討している段階であれば、放棄後も一定の管理義務が残る場合があることもあわせて確認しておくと安心です。近隣の空き家が相続人不存在の状態にあると思われる場合は、自己判断で敷地に立ち入ったり手を加えたりせず、まずは自治体や専門家に相談することが望ましい対応になります。

また、共有名義の不動産で共有者の一人が相続人不存在のまま亡くなった場合は、その持分は国庫に帰属するのではなく、他の共有者に帰属することになっています。この場合、残った共有者にとっては結果的に持分が増えることになりますが、その分登記の手続きが必要になったり、固定資産税の負担割合が変わったりすることもあるため、共有者の一人に相続人がいない可能性があると分かった時点で、早めに司法書士などへ相談しておくと後の手続きがスムーズになります。実家を兄弟姉妹で共有している方は、それぞれの家庭状況や将来の相続人の有無についても、一度確認しておくと安心です。

アスリートホームでは、相続に関する空き家の管理や、将来的な売却の相談にも対応しています。相続人不存在に関する手続きそのものは弁護士など専門家の領域になりますが、空き家の現状把握や今後の方針についてお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

相続人がいるかどうか自分では分からない場合はどうすればいいですか?

戸籍を遡って調査することで相続人の有無を確認できます。自分で戸籍を取り寄せるのが難しい場合は、弁護士や司法書士に調査を依頼することも可能です。

相続財産清算人の申立て費用は誰が負担するのですか?

申立人が予納金を負担するのが原則です。ただし、財産の換価が進めばその中から償還される場合もあり、最終的な負担額は財産の状況によって変わります。

近隣の空き家が相続人不存在かどうかを個人で調べる方法はありますか?

登記事項証明書で所有者名は確認できますが、相続関係までは個人で調査するのは難しいことが多いです。管理状態に不安がある場合は、自治体の空き家対策窓口に相談するのが現実的です。

特別縁故者になれる可能性がある場合、何から始めればよいですか?

まずは相続人捜索の公告が行われているか、家庭裁判所や弁護士を通じて確認することから始まります。申立てには期間の制限があるため、早めの相談が大切です。